2005年 05月 19日
台湾WHOオブザーバー加盟問題と中国の姿勢 |
昨日は、靖国参拝問題に関して中国の悪口(笑)をさんざん書いたが、今日も、それに近い話である。まずは5月16日付の下記の産経新聞社説を御覧頂きたい。
産経社説「台湾のWHO参加 中国の善意が試される時」
世界保健機関(WHO)の年次総会が十六日からジュネーブで始まるが、今年も台湾のオブザーバー参加問題が注目点の一つになっている。
台湾は、「中華民国」が一九七一年に国連の議席を失ったのに伴い、翌年から国連の専門機関であるWHOからも追われ、以来三十三年間、世界の医療衛生保健ネットワークから締め出されてきた。
台湾当局は一九九七年以来、WHO総会へのオブザーバー参加を申請し続け、今年で九回目となるが、「台湾のWHO参加申請は台湾独立の陰謀」などと強く反対する中国の外交圧力により、ことごとく阻まれてきた。
台湾の参加問題は、初年を除き一昨年までは、総会の運営方法などを決める総務委員会(二十五カ国)で議題とすることすら認められなかった。
昨年は七年ぶりに総会の場でも採決されたが、事実上の台湾参加支持が二十五カ国だったのに対し、反対が百三十三カ国という結果で、台湾にとって厳しい状況が続いている。
しかし、今年は少々変化も起きた。四月末の胡錦濤・中国共産党総書記と台湾の連戦・中国国民党主席の会談合意内容に、「両党が台湾のWHO参加など国際活動に関する協議を促進すること」が含まれていたからだ。
これに対し台湾側は「中国は対外的に善意をちらつかせているものの、実際には台湾を圧迫し続けており、こんどのWHO総会は中国の言行不一致を検証する絶好の機会となる」(陳唐山外交部長)と懐疑的だが、今度の総会での中国の姿勢には注目したい。
台湾のWHO参加は、医療健康という基本的人権にかかわるもので、政治とは分離すべき問題だ。しかも台湾当局は、主権問題を避けるためオブザーバーでの参加を申請している。
米国は数年前から、日本は三年前から台湾の参加支持を表明し、欧州も従来の欧州議会に加え、ベルギー下院が今月、初めて支持決議案を可決した。政治と医療保健問題は分離すべきだという意見が浸透しつつある。
世界的な感染症が懸念される中、台湾排除でWHOの防疫ネットワークに穴を作っておいてよいはずがない。台湾にとっても世界にとっても危険だ。中国が硬直的態度を続ければ、世界の反発と批判を強めるだけである。
記事にもあるとおり、鳥インフルエンザなど世界的な感染症が問題視される中で、台湾のWHO参加問題は、もはや「二つの中国を認めるものだ」などという議論は通用しない。さらに胡錦濤・連戦会談の際、胡錦濤と連戦は共同コミュニケを発表し、台湾の世界保健機関(WHO)加盟を含む国際活動への参加協議の促進を唱った、と言うことである。そこで中国がどういう態度を取るのか、年次総会での様子が気になっていた。
しかし結果は「案の上」であったようだ。
産経新聞「WHO、災害対策など協議 台湾参加は総会議題とせず」
世界的な保健衛生問題を協議する世界保健機関(WHO)総会が16日、ジュネーブの国連欧州本部で開幕した。25日までの会期中、昨年12月のスマトラ沖地震による津波被害を教訓とした自然災害時の感染症防止対策や、感染症に関する取り決めである世界保健規則の改正問題などを協議する。
初日は開幕の全体会議に引き続き、議事運営を審議する総務委員会を開催。総会へのオブザーバー参加を申請している台湾の扱いを総会の議事として取り上げるかどうかを協議した。中国をはじめ反対する国の数が賛成国を上回ったため、委員会は台湾問題を議題にしないことを決め、全体会議も同委員会の決定を承認した。
台湾のオブザーバー問題を総会の議題とするかどうかについては昨年、1997年以来7年ぶりに本会議採決が行われ、反対多数で否決された。日本は米国などとともに議題化を支持した。
今年の総会では中東・アフリカ地域で新たな患者が発生し、今年中の撲滅という目標の達成が危ぶまれているポリオ対策なども協議する。(共同)
実際、これについて中国政府の姿勢は頑なである。「人民網日本語版」には以下のような記事が掲載されている。
外交部報道官「WHOは主権国家のみが参加」
外交部の孔泉報道官は17日の記者会見で、世界保健機関(WHO)総会への台湾オブザーバー参加案が拒否された問題に関連して、記者の質問に答えた。
――中国共産党の胡錦濤総書記と中国国民党の連戦主席の会談の報道資料には「両岸協議が促進、再開した後、台湾の民衆が関心を持つ国際活動参画の問題を話し合う。WHO加盟問題は優先的に含まれる」とある。だが台湾は16日、WHO総会オブザーバー参加をまたも逃した。これは報道資料と一致しないのではないか。
WHOとWHO総会参加の問題について、国連憲章、WHO組織法およびWHO議事規則の中に明確な規定がある。それは主権国家だけが同機関の正式な加盟国とすることができるというものだ。WHO総会オブザーバー参加についてだが、これも総会議長もしくは総責任者が特定の状況の下でWHO組織法と議事規則に照らして確定しなければならず、条件に合った状況の下で一部の地域がある特定の会議と技術的活動に参加できるよう招くものだ。
16日は一部の国がこうした厳粛な場に再び「一つの中国」論争を引き起こし、中国を分裂させる活動に従事した。われわれはこれに断固反対した。このような活動は両岸が保健衛生を含む分野での交流と協力に寄与しない。(編集ZX)
また、あの孔泉報道官である。顔も思い出したくない人物であるが、その内容たるや、もはや何をか云わんやである。台湾の人口は約2200万人強。しかも台湾では日本ブームで、年間100万人近くが日本に旅行に来ているという話もあるらしい。もちろん日本への観光旅行者がその規模ならば、当然アメリカをはじめ世界各国に台湾人観光客が多数訪れているだろうことは想像に難くない。その彼らがWHOの防疫ネットワークから外れることが、どれだけ大きい意味を持つか!WHOそのものの存在理由に関わりかねない問題であるとさえ言えるのでは無かろうか。
しかもエイズはもとより、エボラ出血熱、レジオネラ症、新型ヤコブ病(いわゆる狂牛病?)、O-157と、近年、新たな感染症の脅威は増加する一方である。結核など再興感染症の脅威もある。さらに目下の問題として、鳥インフルエンザの脅威もまた、決して消えてはいないのである。
共同ニュース「鳥インフルエンザ」
日本が台湾に、せめてオブザーバー加盟を促す理由は、そこにある。
それを「一部の国がこうした厳粛な場に再び「一つの中国」論争を引き起こし、中国を分裂させる活動に従事した。」だと!どちらがWHO目的を汚して、「厳粛な場」をおかしな場にしているのだ!また「このような活動は両岸が保健衛生を含む分野での交流と協力に寄与しない。」だと!世界的な感染症を前にして、「両岸」の「保健衛生を含む分野での交流と協力」なんかにどれほどの意味があるというのだ!
台湾国民党・連戦も、ここで大いに考えをあらためる必要があるだろう。あんな国と共同コミュニュケ等を出したところで、何の意味もないのだ!その上で、日本のメディアにも強く主張したい。上記の産経の主張のどこに議論の余地があるだろう。健康・衛生・保健の問題には、国も政治も無いだろう。「一つの中国」も何もないだろう。日本のメディアは、中国のこの異常性を、国民にはっきり伝えるべきでは無いだろうか。
産経社説「台湾のWHO参加 中国の善意が試される時」
世界保健機関(WHO)の年次総会が十六日からジュネーブで始まるが、今年も台湾のオブザーバー参加問題が注目点の一つになっている。
台湾は、「中華民国」が一九七一年に国連の議席を失ったのに伴い、翌年から国連の専門機関であるWHOからも追われ、以来三十三年間、世界の医療衛生保健ネットワークから締め出されてきた。
台湾当局は一九九七年以来、WHO総会へのオブザーバー参加を申請し続け、今年で九回目となるが、「台湾のWHO参加申請は台湾独立の陰謀」などと強く反対する中国の外交圧力により、ことごとく阻まれてきた。
台湾の参加問題は、初年を除き一昨年までは、総会の運営方法などを決める総務委員会(二十五カ国)で議題とすることすら認められなかった。
昨年は七年ぶりに総会の場でも採決されたが、事実上の台湾参加支持が二十五カ国だったのに対し、反対が百三十三カ国という結果で、台湾にとって厳しい状況が続いている。
しかし、今年は少々変化も起きた。四月末の胡錦濤・中国共産党総書記と台湾の連戦・中国国民党主席の会談合意内容に、「両党が台湾のWHO参加など国際活動に関する協議を促進すること」が含まれていたからだ。
これに対し台湾側は「中国は対外的に善意をちらつかせているものの、実際には台湾を圧迫し続けており、こんどのWHO総会は中国の言行不一致を検証する絶好の機会となる」(陳唐山外交部長)と懐疑的だが、今度の総会での中国の姿勢には注目したい。
台湾のWHO参加は、医療健康という基本的人権にかかわるもので、政治とは分離すべき問題だ。しかも台湾当局は、主権問題を避けるためオブザーバーでの参加を申請している。
米国は数年前から、日本は三年前から台湾の参加支持を表明し、欧州も従来の欧州議会に加え、ベルギー下院が今月、初めて支持決議案を可決した。政治と医療保健問題は分離すべきだという意見が浸透しつつある。
世界的な感染症が懸念される中、台湾排除でWHOの防疫ネットワークに穴を作っておいてよいはずがない。台湾にとっても世界にとっても危険だ。中国が硬直的態度を続ければ、世界の反発と批判を強めるだけである。
記事にもあるとおり、鳥インフルエンザなど世界的な感染症が問題視される中で、台湾のWHO参加問題は、もはや「二つの中国を認めるものだ」などという議論は通用しない。さらに胡錦濤・連戦会談の際、胡錦濤と連戦は共同コミュニケを発表し、台湾の世界保健機関(WHO)加盟を含む国際活動への参加協議の促進を唱った、と言うことである。そこで中国がどういう態度を取るのか、年次総会での様子が気になっていた。
しかし結果は「案の上」であったようだ。
産経新聞「WHO、災害対策など協議 台湾参加は総会議題とせず」
世界的な保健衛生問題を協議する世界保健機関(WHO)総会が16日、ジュネーブの国連欧州本部で開幕した。25日までの会期中、昨年12月のスマトラ沖地震による津波被害を教訓とした自然災害時の感染症防止対策や、感染症に関する取り決めである世界保健規則の改正問題などを協議する。
初日は開幕の全体会議に引き続き、議事運営を審議する総務委員会を開催。総会へのオブザーバー参加を申請している台湾の扱いを総会の議事として取り上げるかどうかを協議した。中国をはじめ反対する国の数が賛成国を上回ったため、委員会は台湾問題を議題にしないことを決め、全体会議も同委員会の決定を承認した。
台湾のオブザーバー問題を総会の議題とするかどうかについては昨年、1997年以来7年ぶりに本会議採決が行われ、反対多数で否決された。日本は米国などとともに議題化を支持した。
今年の総会では中東・アフリカ地域で新たな患者が発生し、今年中の撲滅という目標の達成が危ぶまれているポリオ対策なども協議する。(共同)
実際、これについて中国政府の姿勢は頑なである。「人民網日本語版」には以下のような記事が掲載されている。
外交部報道官「WHOは主権国家のみが参加」
外交部の孔泉報道官は17日の記者会見で、世界保健機関(WHO)総会への台湾オブザーバー参加案が拒否された問題に関連して、記者の質問に答えた。
――中国共産党の胡錦濤総書記と中国国民党の連戦主席の会談の報道資料には「両岸協議が促進、再開した後、台湾の民衆が関心を持つ国際活動参画の問題を話し合う。WHO加盟問題は優先的に含まれる」とある。だが台湾は16日、WHO総会オブザーバー参加をまたも逃した。これは報道資料と一致しないのではないか。
WHOとWHO総会参加の問題について、国連憲章、WHO組織法およびWHO議事規則の中に明確な規定がある。それは主権国家だけが同機関の正式な加盟国とすることができるというものだ。WHO総会オブザーバー参加についてだが、これも総会議長もしくは総責任者が特定の状況の下でWHO組織法と議事規則に照らして確定しなければならず、条件に合った状況の下で一部の地域がある特定の会議と技術的活動に参加できるよう招くものだ。
16日は一部の国がこうした厳粛な場に再び「一つの中国」論争を引き起こし、中国を分裂させる活動に従事した。われわれはこれに断固反対した。このような活動は両岸が保健衛生を含む分野での交流と協力に寄与しない。(編集ZX)
また、あの孔泉報道官である。顔も思い出したくない人物であるが、その内容たるや、もはや何をか云わんやである。台湾の人口は約2200万人強。しかも台湾では日本ブームで、年間100万人近くが日本に旅行に来ているという話もあるらしい。もちろん日本への観光旅行者がその規模ならば、当然アメリカをはじめ世界各国に台湾人観光客が多数訪れているだろうことは想像に難くない。その彼らがWHOの防疫ネットワークから外れることが、どれだけ大きい意味を持つか!WHOそのものの存在理由に関わりかねない問題であるとさえ言えるのでは無かろうか。
しかもエイズはもとより、エボラ出血熱、レジオネラ症、新型ヤコブ病(いわゆる狂牛病?)、O-157と、近年、新たな感染症の脅威は増加する一方である。結核など再興感染症の脅威もある。さらに目下の問題として、鳥インフルエンザの脅威もまた、決して消えてはいないのである。
共同ニュース「鳥インフルエンザ」
日本が台湾に、せめてオブザーバー加盟を促す理由は、そこにある。
それを「一部の国がこうした厳粛な場に再び「一つの中国」論争を引き起こし、中国を分裂させる活動に従事した。」だと!どちらがWHO目的を汚して、「厳粛な場」をおかしな場にしているのだ!また「このような活動は両岸が保健衛生を含む分野での交流と協力に寄与しない。」だと!世界的な感染症を前にして、「両岸」の「保健衛生を含む分野での交流と協力」なんかにどれほどの意味があるというのだ!
台湾国民党・連戦も、ここで大いに考えをあらためる必要があるだろう。あんな国と共同コミュニュケ等を出したところで、何の意味もないのだ!その上で、日本のメディアにも強く主張したい。上記の産経の主張のどこに議論の余地があるだろう。健康・衛生・保健の問題には、国も政治も無いだろう。「一つの中国」も何もないだろう。日本のメディアは、中国のこの異常性を、国民にはっきり伝えるべきでは無いだろうか。
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by mt.planter
| 2005-05-19 11:52