2005年 11月 30日
在日米軍再編と中国、沖縄 |
またまた、さらに更新が遅れた。11月は、このままでは更新ナシとなってしまう…ということで、あわててひとつ書いておこう。
で、今日取り上げたいのは、在日米軍再編問題に関する11月28日付の毎日新聞社説である。
毎日社説「在日米軍再編 地元説得を政府の責任で」
日米両政府が在日米軍の再編に関する「中間報告」に合意してからまもなく1カ月になる。
額賀福志郎防衛庁長官は来年3月の「最終合意」を目指し、沖縄県など関係自治体を訪ねて理解と協力を要請した。
麻生太郎外相も沖縄入りし、25日に稲嶺恵一知事と会談した。麻生外相は来月上旬に訪米、沖縄の要望などを踏まえライス国務長官と会談する予定だ。
政府は、中間報告について在日米軍全体としては負担の軽減につながるとの認識を示している。だが、一部地域で地元負担が増大するのも事実だ。
このため、政府は関係閣僚会議や局長レベルの幹事会を設置した。月内には、政府・与党協議会が発足する段取りだ。政府・与党には体制を整えるだけでなく、事態が進展するよう全力で地元と協議をしてもらいたい。
しかし、沖縄県はグアム移転などで海兵隊約7000人を削減することは評価しても、普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設には反発している。神奈川県はキャンプ座間への米陸軍第1軍団司令部の移転に反対だ。神奈川県にある厚木基地の米空母艦載機の岩国移転については、地元が強い難色を示している。
米軍基地の航空機やヘリは騒音をまき散らす。米兵の犯罪も心配だ。新たな負担を押し付けられる地元住民の反発も理解できないわけではない。
とはいっても、政府は将来にわたる安全保障を念頭に在日米軍の再編で米国と協議を進めてきた。合意事項が実現できなければ日米同盟はぎくしゃくする。そんな事態は避けなければならない。
中間報告では、国際テロや大量破壊兵器の拡散のほか、朝鮮半島や台湾海峡の動向などを日米共通の戦略目標として掲げた。そのうえで米軍と自衛隊の任務や役割分担を調整し、基地再編の大きな構図を描いている。
在日米軍の再編は、日本の防衛と日米同盟の変革につながるものだ。だとすれば地域の問題というより日本全体の問題だ。再編問題に関して疑問があるなら、政府の責任で解消しなければならない。
米軍は自国のアジア戦略のために日本に駐留しているのではないのか。これから自衛隊は在日米軍の下請けで国際協力に駆り出されはしないのか。政府にはまず、国民が不信を抱くことがないよう米軍再編の安全保障上の意義をきちんと説明する必要がある。
1999年に政府が日米の合意を受けて閣議決定した普天間の名護市辺野古沖移転の方針が頓挫したのはなぜなのか。責任の一端は小泉内閣にあるに違いない。
そうした過去の反省を踏まえて中間報告をまとめたはずだが、関係自治体の態度は硬い。
日米間にはなお協議すべき事項が残っている。政府は可能な限り今後の協議に関する情報を地元に提供し、信頼関係を築きながら折衝を進めてもらいたい。
政府が責任を十分自覚しなければ、地元の説得はおぼつかない。
まず第一に、在日米軍の再編とは何なのか?これについて、この社説では国際テロや大量破壊兵器の拡散のほか、朝鮮半島や台湾海峡の動向などを日米共通の戦略目標として掲げた。そのうえで米軍と自衛隊の任務や役割分担を調整し、基地再編の大きな構図を描いている。と記している。ここに在日米軍再編のキモがあるのであろう。そのこと自体には、特に違和感はない。とはいえこの文章は、何を言わんとしているのかわかりにくいものではある。そもそも米軍と自衛隊の役割分担をどういう方向に調整していこうとしているのかという点がぼかされている。
第一、「朝鮮半島や台湾海峡の動向」というのは、何だろう。防衛問題である以上、どこから(何から)防衛するのかという、「仮想敵」を考慮せずしては守りようもなかろう。その意味で、朝鮮半島の動向といえば、一応、第一義的には北朝鮮を仮想敵国と置くのだろう。
一方で、台湾海峡の問題となれば、その対象は中国となる。貧困に苦しみ、体制維持に汲々とする北朝鮮を対象とする防衛構想と、「世界の工場」などと言われはじめ、有人宇宙ロケットを成功させ、日本に次ぐ世界二位の外貨準備高を誇り、世界中から石油を買いまくっている中国を相手とする防衛構想が、一元的なものであるわけも無かろう。ましてこれに併せて、アメリカ自身がもっとも狙われて不思議ではない「国際テロ」などをも対象とする防衛!これらから日米両国を安全に守る防衛体制は単純なものではありえなかろう。とすればアメリカが、これまでのように「世界の警察」よろしく、世界中の情報を牛耳り、日本や台湾の防衛までのほとんど総てを担うのは、不可能になりつつあるのだろう。
米ソ冷戦時代、アメリカは仮想敵をソ連におきソ連との軍拡競争に奔走してきた。アポロ計画なども、このことなしには達成されなかった。冷戦の終結は、一時、軍拡競争からの解放を示すかと思われた。しかし現実には、国際秩序の混迷を呼び、地域紛争・民族紛争が激化し、大量破壊兵器が広がった。
とはいえ、これもイラク戦争を通じて、イラク・フセイン体制を打破し、リビア・カダフィー大佐を恭順させ、パキスタン・ムシャラフ大統領はいつの間にか、勲章を一杯付けた軍服を脱ぎ、スーツ姿で西側の国際会議に出てくるようになった。残るは、アフマディネジャド大統領就任で再び強烈な反米を示すようになったイランとシリアと北朝鮮ぐらいであろう。
ここまでは、アメリカとしては、成功だったといえるだろう。シリアや北朝鮮は資源も乏しく、アメリカとしては、それほど大敵ではない。あとはイランだけ…となるはずだった。しかしここからがいけない!アメリカはイラク復興に手間取り、国内には反戦ムードが強くなる一方、イランなどより更にやっかいな「敵」が現れた。これが中国である。
中国は、決してアメリカを敵に回すような馬鹿な国ではない。実際、外貨準備の多くはドルである。しかし経済成長を成し遂げ(?)自信をつけてくると、「中華思想」が首をもたげてくる。もはや世界秩序をアメリカに牛耳らせておく訳にはいかない。少なくともアジア~太平洋~中東地域周辺は、中国文化圏としなければ…。
さらに、現在の中国は石油資源の確保が急務である。エネルギー非効率な産業構造の上、極端に貧富の格差が広がり、経済成長を続けることだけが唯一の生きる道という綱渡りの国家経営を支えている現状では、エネルギーの枯渇は、一気に経済破綻→体制崩壊をもたらしかねない。そのためには、スーダンだろうが、シリアだろうが、イラクだろうが、ベネゼエラのチャベス大統領だろうが経済援助し、取引をする。これがブッシュの世界戦略の足を引っ張っている。
もうひとつ中国には大きな蹉跌がある。経済成長し海外との物流・情報の往き来が頻繁になってくれば、当然、民主化が求められてくる。これを押さえ込むには、国民を海外に目を向けさせ、仮想敵が必要になってくる。それが第一に「反日」であり、「反米」であるだろう。
アメリカにとって、中国は旧ソ連ばりの強力な敵である。技術的、軍事的にいえば、当時の旧ソ連と比べて、アメリカの軍事力・技術力から見て中国など問題外であり強力な敵とは言い難いだろう。しかし当時の米ソは経済圏も分かれていたのに対し、中国は、アメリカに商品を売ることで成り立ち、アメリカも中国の商品なしには成り立たない。この米中関係に日本を加えた参加国の経済的結び付きは、簡単に切り離せる関係ではありえない。実際、前述のように大量のドルを保有しているのが中国である。そのことを思えば、アメリカにとって中国は、旧ソ連以上の難敵である。単純に軍事力で打ち負かすなどという事ができる相手ではない。
とはいえこれ以上、中国に「中華思想」を振り回されるようでは、これはアメリカからすれば、自らの世界観への挑戦ととるだろう。アメリカは今、米ソ冷戦時代以上の大敵を前にしているのだ。
こう考えてくれば、米国内でのイラク戦争からの反戦ムードも踏まえ、世界の米軍をさらに効果的に機能させることが肝要になる。あわせて、同盟国には、今以上の負担を負ってもらわなければならない。そこで在日米軍の再編ということであろう。効率を上げるには、まずは集中だろう。在韓米軍などをも含め、日本のいくつかの個所に統合させていくというのは、当然の話だろう。
上記の毎日社説では、この在日米軍再編問題を、「自国のアジア戦略のために日本に駐留しているのではないのか。これから自衛隊は在日米軍の下請けで国際協力に駆り出されはしないのか。政府にはまず、国民が不信を抱くことがないよう米軍再編の安全保障上の意義をきちんと説明する必要がある。」と記す。
しかし上記のようなことが、アメリカのアジア戦略だったとして、日本のアジア戦略が、これとは別に何か考えられるのであろうか?日本社会は、すっかりアメリカナイズされ、自由、民主主義、平等などという価値が絶対視されつつある。筆者は、これが正しいとは思わないが、だからといって中国の現状、北朝鮮の現状を思えば、「東アジア共同体」だのは到底考えられず、「中華思想」に基づいて台湾や日本に手を伸ばしつつある中国を前にして、このアメリカのアジア戦略に乗るしか生きる道はないのではないだろうか?
なお、これには異論があるかも知れない。しかし東シナ海のガス田問題にみる中国の主張する「大陸棚論」などは、ほかにどう説明できるのであろうか?
最後に、本社説を読み、特に問題提起したいのは以下の議論である。
沖縄県は、~普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設には反発している。神奈川県はキャンプ座間への米陸軍第1軍団司令部の移転に反対だ。
これなどは、地元の気持ちとしては当然の事だと思う。例えば火葬場やゴミ処理場、屎尿処理場など、絶対どこかに必要となるような施設でも、地元に来るとなれば、地元の首長は反対しなければならない。民主主義の宿命ともいうものだろう。
また神奈川県のキャンプ座間などは、戦前の「相武台」=陸軍士官学校の跡地である。戦中期に、日本陸軍によって半ば強制的に土地を収用され、戦後、返還されるかと思えば、米軍が使用するという話となり、今日に至っているものである。地元としては、一度も納得していない。それが「米陸軍第1軍団司令部になるから宜しく!」と言われても納得出来ない、という気持ちはよく解る。
しかし、どこか別の所に…と云ってみたところで、難しいことは言うまでもない。キャンプ座間周辺は、首都圏のベットタウン化が進み、近くにお住いの方の大多数が、基地があることを前提として居住されていることもある。
米軍再編の安全保障上の意義をきちんと説明する必要がある。
これには間違いはないだろうが、説明だけで解決出来る問題なのだろうか?成田の闘争は、「ボタンのかけ違い」だといわれた。しかしこの問題は、それ以前の問題である。政府の真摯な姿勢が必要な事はいうまでもないが、地元がどう折れるか、といったことを地元側がどう考えるか、こそが問われる問題といえよう。
さらに難しいのは沖縄である。稲嶺知事は沖縄の負担が大きすぎると主張している。これは確かである。さらに米軍の再編は、より一層、沖縄への集中を増すのではないだろうか?しかし、筆者はあえて稲嶺知事に主張したい。沖縄は日本の辺境であるという考えが強すぎるんではないだろうか?
東アジアを沖縄を中心として見れば、非常に大雑把ながら、上海までの距離は、台湾、鹿児島・熊本あたりまでとほぼ同じ750キロメートルほどであり、この中に東シナ海?台湾海峡が含まれ、さらに沖縄-香港、沖縄-北京、沖縄-東京がほぼ等距離(その倍の一五〇〇キロほど)で、その半円の中に、中国の平原部の大半が含まれ、北朝鮮さえそのなかにすっぽりとおさまってしまう。東アジアの中心というべき場所といっていいかもしれないのだ。そしてこの沖縄の地理的位置は、中国の発展とともに、ますます重要性を帯びてくる。先の米軍の国家戦略から考えても、アメリカは、絶対にこの東アジアの要衝を手放す事はないだろう。
とすれば、沖縄の方には強く主張したい。沖縄の地理的な重要性を、なぜ米軍だけが重視する一方で、地元の沖縄県がそこに着目しないのだろうか?カントリーリスクが無く、質の高い労働力があり、最高の観光地としての要素を持っている沖縄は、考えようによっては産業を誘致しうる余地を十分に持っているといえるのではないだろうか。
少なくとも「サトウキビ畑」を守ることだけを主張していても、基地が無くなることはあるまい。
で、今日取り上げたいのは、在日米軍再編問題に関する11月28日付の毎日新聞社説である。
毎日社説「在日米軍再編 地元説得を政府の責任で」
日米両政府が在日米軍の再編に関する「中間報告」に合意してからまもなく1カ月になる。
額賀福志郎防衛庁長官は来年3月の「最終合意」を目指し、沖縄県など関係自治体を訪ねて理解と協力を要請した。
麻生太郎外相も沖縄入りし、25日に稲嶺恵一知事と会談した。麻生外相は来月上旬に訪米、沖縄の要望などを踏まえライス国務長官と会談する予定だ。
政府は、中間報告について在日米軍全体としては負担の軽減につながるとの認識を示している。だが、一部地域で地元負担が増大するのも事実だ。
このため、政府は関係閣僚会議や局長レベルの幹事会を設置した。月内には、政府・与党協議会が発足する段取りだ。政府・与党には体制を整えるだけでなく、事態が進展するよう全力で地元と協議をしてもらいたい。
しかし、沖縄県はグアム移転などで海兵隊約7000人を削減することは評価しても、普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設には反発している。神奈川県はキャンプ座間への米陸軍第1軍団司令部の移転に反対だ。神奈川県にある厚木基地の米空母艦載機の岩国移転については、地元が強い難色を示している。
米軍基地の航空機やヘリは騒音をまき散らす。米兵の犯罪も心配だ。新たな負担を押し付けられる地元住民の反発も理解できないわけではない。
とはいっても、政府は将来にわたる安全保障を念頭に在日米軍の再編で米国と協議を進めてきた。合意事項が実現できなければ日米同盟はぎくしゃくする。そんな事態は避けなければならない。
中間報告では、国際テロや大量破壊兵器の拡散のほか、朝鮮半島や台湾海峡の動向などを日米共通の戦略目標として掲げた。そのうえで米軍と自衛隊の任務や役割分担を調整し、基地再編の大きな構図を描いている。
在日米軍の再編は、日本の防衛と日米同盟の変革につながるものだ。だとすれば地域の問題というより日本全体の問題だ。再編問題に関して疑問があるなら、政府の責任で解消しなければならない。
米軍は自国のアジア戦略のために日本に駐留しているのではないのか。これから自衛隊は在日米軍の下請けで国際協力に駆り出されはしないのか。政府にはまず、国民が不信を抱くことがないよう米軍再編の安全保障上の意義をきちんと説明する必要がある。
1999年に政府が日米の合意を受けて閣議決定した普天間の名護市辺野古沖移転の方針が頓挫したのはなぜなのか。責任の一端は小泉内閣にあるに違いない。
そうした過去の反省を踏まえて中間報告をまとめたはずだが、関係自治体の態度は硬い。
日米間にはなお協議すべき事項が残っている。政府は可能な限り今後の協議に関する情報を地元に提供し、信頼関係を築きながら折衝を進めてもらいたい。
政府が責任を十分自覚しなければ、地元の説得はおぼつかない。
まず第一に、在日米軍の再編とは何なのか?これについて、この社説では国際テロや大量破壊兵器の拡散のほか、朝鮮半島や台湾海峡の動向などを日米共通の戦略目標として掲げた。そのうえで米軍と自衛隊の任務や役割分担を調整し、基地再編の大きな構図を描いている。と記している。ここに在日米軍再編のキモがあるのであろう。そのこと自体には、特に違和感はない。とはいえこの文章は、何を言わんとしているのかわかりにくいものではある。そもそも米軍と自衛隊の役割分担をどういう方向に調整していこうとしているのかという点がぼかされている。
第一、「朝鮮半島や台湾海峡の動向」というのは、何だろう。防衛問題である以上、どこから(何から)防衛するのかという、「仮想敵」を考慮せずしては守りようもなかろう。その意味で、朝鮮半島の動向といえば、一応、第一義的には北朝鮮を仮想敵国と置くのだろう。
一方で、台湾海峡の問題となれば、その対象は中国となる。貧困に苦しみ、体制維持に汲々とする北朝鮮を対象とする防衛構想と、「世界の工場」などと言われはじめ、有人宇宙ロケットを成功させ、日本に次ぐ世界二位の外貨準備高を誇り、世界中から石油を買いまくっている中国を相手とする防衛構想が、一元的なものであるわけも無かろう。ましてこれに併せて、アメリカ自身がもっとも狙われて不思議ではない「国際テロ」などをも対象とする防衛!これらから日米両国を安全に守る防衛体制は単純なものではありえなかろう。とすればアメリカが、これまでのように「世界の警察」よろしく、世界中の情報を牛耳り、日本や台湾の防衛までのほとんど総てを担うのは、不可能になりつつあるのだろう。
米ソ冷戦時代、アメリカは仮想敵をソ連におきソ連との軍拡競争に奔走してきた。アポロ計画なども、このことなしには達成されなかった。冷戦の終結は、一時、軍拡競争からの解放を示すかと思われた。しかし現実には、国際秩序の混迷を呼び、地域紛争・民族紛争が激化し、大量破壊兵器が広がった。
とはいえ、これもイラク戦争を通じて、イラク・フセイン体制を打破し、リビア・カダフィー大佐を恭順させ、パキスタン・ムシャラフ大統領はいつの間にか、勲章を一杯付けた軍服を脱ぎ、スーツ姿で西側の国際会議に出てくるようになった。残るは、アフマディネジャド大統領就任で再び強烈な反米を示すようになったイランとシリアと北朝鮮ぐらいであろう。
ここまでは、アメリカとしては、成功だったといえるだろう。シリアや北朝鮮は資源も乏しく、アメリカとしては、それほど大敵ではない。あとはイランだけ…となるはずだった。しかしここからがいけない!アメリカはイラク復興に手間取り、国内には反戦ムードが強くなる一方、イランなどより更にやっかいな「敵」が現れた。これが中国である。
中国は、決してアメリカを敵に回すような馬鹿な国ではない。実際、外貨準備の多くはドルである。しかし経済成長を成し遂げ(?)自信をつけてくると、「中華思想」が首をもたげてくる。もはや世界秩序をアメリカに牛耳らせておく訳にはいかない。少なくともアジア~太平洋~中東地域周辺は、中国文化圏としなければ…。
さらに、現在の中国は石油資源の確保が急務である。エネルギー非効率な産業構造の上、極端に貧富の格差が広がり、経済成長を続けることだけが唯一の生きる道という綱渡りの国家経営を支えている現状では、エネルギーの枯渇は、一気に経済破綻→体制崩壊をもたらしかねない。そのためには、スーダンだろうが、シリアだろうが、イラクだろうが、ベネゼエラのチャベス大統領だろうが経済援助し、取引をする。これがブッシュの世界戦略の足を引っ張っている。
もうひとつ中国には大きな蹉跌がある。経済成長し海外との物流・情報の往き来が頻繁になってくれば、当然、民主化が求められてくる。これを押さえ込むには、国民を海外に目を向けさせ、仮想敵が必要になってくる。それが第一に「反日」であり、「反米」であるだろう。
アメリカにとって、中国は旧ソ連ばりの強力な敵である。技術的、軍事的にいえば、当時の旧ソ連と比べて、アメリカの軍事力・技術力から見て中国など問題外であり強力な敵とは言い難いだろう。しかし当時の米ソは経済圏も分かれていたのに対し、中国は、アメリカに商品を売ることで成り立ち、アメリカも中国の商品なしには成り立たない。この米中関係に日本を加えた参加国の経済的結び付きは、簡単に切り離せる関係ではありえない。実際、前述のように大量のドルを保有しているのが中国である。そのことを思えば、アメリカにとって中国は、旧ソ連以上の難敵である。単純に軍事力で打ち負かすなどという事ができる相手ではない。
とはいえこれ以上、中国に「中華思想」を振り回されるようでは、これはアメリカからすれば、自らの世界観への挑戦ととるだろう。アメリカは今、米ソ冷戦時代以上の大敵を前にしているのだ。
こう考えてくれば、米国内でのイラク戦争からの反戦ムードも踏まえ、世界の米軍をさらに効果的に機能させることが肝要になる。あわせて、同盟国には、今以上の負担を負ってもらわなければならない。そこで在日米軍の再編ということであろう。効率を上げるには、まずは集中だろう。在韓米軍などをも含め、日本のいくつかの個所に統合させていくというのは、当然の話だろう。
上記の毎日社説では、この在日米軍再編問題を、「自国のアジア戦略のために日本に駐留しているのではないのか。これから自衛隊は在日米軍の下請けで国際協力に駆り出されはしないのか。政府にはまず、国民が不信を抱くことがないよう米軍再編の安全保障上の意義をきちんと説明する必要がある。」と記す。
しかし上記のようなことが、アメリカのアジア戦略だったとして、日本のアジア戦略が、これとは別に何か考えられるのであろうか?日本社会は、すっかりアメリカナイズされ、自由、民主主義、平等などという価値が絶対視されつつある。筆者は、これが正しいとは思わないが、だからといって中国の現状、北朝鮮の現状を思えば、「東アジア共同体」だのは到底考えられず、「中華思想」に基づいて台湾や日本に手を伸ばしつつある中国を前にして、このアメリカのアジア戦略に乗るしか生きる道はないのではないだろうか?
なお、これには異論があるかも知れない。しかし東シナ海のガス田問題にみる中国の主張する「大陸棚論」などは、ほかにどう説明できるのであろうか?
最後に、本社説を読み、特に問題提起したいのは以下の議論である。
沖縄県は、~普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設には反発している。神奈川県はキャンプ座間への米陸軍第1軍団司令部の移転に反対だ。
これなどは、地元の気持ちとしては当然の事だと思う。例えば火葬場やゴミ処理場、屎尿処理場など、絶対どこかに必要となるような施設でも、地元に来るとなれば、地元の首長は反対しなければならない。民主主義の宿命ともいうものだろう。
また神奈川県のキャンプ座間などは、戦前の「相武台」=陸軍士官学校の跡地である。戦中期に、日本陸軍によって半ば強制的に土地を収用され、戦後、返還されるかと思えば、米軍が使用するという話となり、今日に至っているものである。地元としては、一度も納得していない。それが「米陸軍第1軍団司令部になるから宜しく!」と言われても納得出来ない、という気持ちはよく解る。
しかし、どこか別の所に…と云ってみたところで、難しいことは言うまでもない。キャンプ座間周辺は、首都圏のベットタウン化が進み、近くにお住いの方の大多数が、基地があることを前提として居住されていることもある。
米軍再編の安全保障上の意義をきちんと説明する必要がある。
これには間違いはないだろうが、説明だけで解決出来る問題なのだろうか?成田の闘争は、「ボタンのかけ違い」だといわれた。しかしこの問題は、それ以前の問題である。政府の真摯な姿勢が必要な事はいうまでもないが、地元がどう折れるか、といったことを地元側がどう考えるか、こそが問われる問題といえよう。
さらに難しいのは沖縄である。稲嶺知事は沖縄の負担が大きすぎると主張している。これは確かである。さらに米軍の再編は、より一層、沖縄への集中を増すのではないだろうか?しかし、筆者はあえて稲嶺知事に主張したい。沖縄は日本の辺境であるという考えが強すぎるんではないだろうか?
東アジアを沖縄を中心として見れば、非常に大雑把ながら、上海までの距離は、台湾、鹿児島・熊本あたりまでとほぼ同じ750キロメートルほどであり、この中に東シナ海?台湾海峡が含まれ、さらに沖縄-香港、沖縄-北京、沖縄-東京がほぼ等距離(その倍の一五〇〇キロほど)で、その半円の中に、中国の平原部の大半が含まれ、北朝鮮さえそのなかにすっぽりとおさまってしまう。東アジアの中心というべき場所といっていいかもしれないのだ。そしてこの沖縄の地理的位置は、中国の発展とともに、ますます重要性を帯びてくる。先の米軍の国家戦略から考えても、アメリカは、絶対にこの東アジアの要衝を手放す事はないだろう。
とすれば、沖縄の方には強く主張したい。沖縄の地理的な重要性を、なぜ米軍だけが重視する一方で、地元の沖縄県がそこに着目しないのだろうか?カントリーリスクが無く、質の高い労働力があり、最高の観光地としての要素を持っている沖縄は、考えようによっては産業を誘致しうる余地を十分に持っているといえるのではないだろうか。
少なくとも「サトウキビ畑」を守ることだけを主張していても、基地が無くなることはあるまい。
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by mt.planter
| 2005-11-30 17:42